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本を読む女

本を読む女_c0062603_16582729.jpg先月ロングビーチから北カリフォルニアのアタスカデロに引っ越した、SLOな日々のavocadoさんから、引越し前に何冊かの本をいただいた。
これはその中の1冊。
avocadoさんも自分からは林真理子は読まないけれど、人にいただいたから読んでみたら、結構面白かったという。
本との巡り合いは、時としてそういう「意外な発見」をもたらしてくれる。
私も自ら積極的に手を出す作家ではなく、時々雑誌の対談などで目にする程度だった。
これはフィクションというよりは、林真理子の母の人生を描いた私小説の色合いが濃い。
幼いときから本が好きで好きでたまらなかった少女が、その人生の大半を本とともに過ごし、戦後は「本屋」を開くという話。
本屋まで開ければ本好き冥利につきるだろう。
もっとも戦時中などは、のんびり読書を楽しむなどいう余裕はなかったことだろう。
この作品全編を通じて、「本を読む」という行為は、楽しいもの、満たされるものというスタンスが取られているが、そのシチュエーションは決まって、精神的には辛いときなのである。
つまりこれは一種の逃避行為なのではないか。
本を読むことによって、現実の辛さ、しんどさからしばし目をそむけるという…
いや、これは実によくわかるのだ。
私も時々、何もかも放り出して本に没頭するときがある。
そういうときは決まって、マイナスの状況にあるときなのだから…
本を読むという行為は、決して「時間」にだけ左右されるものではない、とつくづく思う。

本を読む女/林真理子(新潮文庫)

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by lanova | 2006-07-07 01:23 | Book