人気ブログランキング | 話題のタグを見る

Casa de NOVA in Minnesota

lanova.exblog.jp

言葉をみがく

言葉をみがく_c0062603_14465772.jpg日本語教育に携わっている人にはおなじみの早稲田大学教授森田良行氏の名著。
ふだんごく当たり前に何気なく使っている日本語のはずなのに、ロジカルに見ていくと「あれ?」「おやっ?」と思うことが山のようにある。
特に日本語を母語としない日本語学習者から見れば、腑に落ちない使い方がどんどん出てくる。
たとえば「明日行ったときに話します」とは、何の不自然もないような言葉だが、「明日」は未来なのに、なぜ「行った」という過去形になるんだろうか、なんて日本語を話す我々は真剣に考えたこともないはずだ。
また幼い頃にだれもが口ずさんだ「シャボン玉飛んだ、屋根まで飛んだ、屋根まで飛んで、こわれて消えた」という歌詞で、「屋根まで吹き飛ばす大風だったんだなあ」という感想を持つ日本語学習者さえいる。
そしてその日本語学習者を最大に悩ませるのが、敬語、丁寧語、謙譲語などの使い分け。
英語では食べるはどう転んでも「eat」である。
ところが日本語では、相手によって「食べる」「召し上がる」「いただく」「お食べになる」果ては「食う」という言葉まで存在するのだから、混乱して当たり前だろう。
なぜ、こんなに幾通りもの使い分けがあるかというと…
ここが目から鱗が落ちる森田論なのだが、「日本語は限りなく話者中心の言葉だから」というのである。
なるほど、常に「私」を中心にして話すわけで、その私との位置関係によって言葉が使い分けられるというのである。
それは日本語を母語とする者にとって暗黙のうちの了解事項であり、だから会話に「私」という主語がなくても充分に通じるというのにも、大いに頷いた。
この本は古今の名作を引用して、とてもわかりやすく書いてあり、日本語に対する新たな発見がそこかしこにある。
日本語教育に携わっていようがなかろうが、日本語を話す者にとっては興味深くためになる1冊。
だが、残念なことに現在は品切れで購入はできない模様。
おそらく図書館にはあるとは思うのだが…

言葉をみがく/森田良行
(創拓社)
by lanova | 2006-03-10 22:00 | Book